04.いつだって隣にいたい
「なあ仁王」
「んー」
「俺さ、すっげえ気になることあんだけど」
なんだと目で問えば、わかってるだろと言いたげな睨みが返される。
昼休みも残り十分を切った今。陽光明るく、賑やかさを極めた教室内で、椅子をしならせるブン太の仏頂面は酷く浮いて見えた。
「いちいちツッコミたくもなかったんだけどよ」
「おー」
「それ。ツッコミ待ちなわけ」
「…………」
「いい加減鬱陶しくてしょうがねんだけど」
呆れたようにぷうっと薄緑のガムが膨らむ。その大きなきれいな円の中心に、輪郭を膨らませた誰かさんが映り込んだ。
そろそろと左脇を窺うと、好き勝手な方向へ跳ねる真っ黒な癖毛がふわりと揺れた。
「あと十分しかいられないんだしいーじゃないすか」
口を尖らせながら、しがみつく力をさらに強められ俺の左腕が悲鳴を上げる。幸せな痛みだと変換しそうになった頭を軽く振り、緩みかけた頬も引き締めた。
チッと小さな舌打ちに顔を前へと戻せば、眉間に大量のしわを寄せるブン太がパチンとガムを破裂させたところで。
「毎時間毎時間よく飽きねえな? つかそれを見せられる俺の身にもなれよ」
「いやなら見なきゃいーじゃないですか。ねっ、におーセンパイ」
「俺に振んな」
「冷たっ! だって先輩ぜんぜんうちの教室来てくれないしー、俺が来なきゃ部活まで会えないじゃん?」
「んなこと知るかっつの。何が悲しくてクラスメートと後輩のチチ繰り合い見てなきゃいけねんだよ帰れ」
「チチ繰り合っ……、そんなんしてねーじゃん! したいけど! ちゃんとガマンしてるじゃんか! したいけどっ!」
教室中に響き渡った叫びのおかげで、もう殆ど戻ってきているクラスメートからの注目をビシバシ浴びる羽目に。
当の本人はまったく意に介していないのか気付いていないのか、しきりに「これでもガマンしてる!」なんて堂々言い放ち、しがみつく俺の左腕にぐりぐりと額を押し付けている。
目の前には目が据わっている悪友。
左側には駄々をこねる後輩兼恋人。
どっちの味方につこうか、なんて。考えてしまった時点で、俺はもう赤也と同じ側にいるんだろうな。
いつだって隣にいたい
全力で求められるのも悪くないかもしれない。
仁赤創作イプ・お題4